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表2−5 成熟観光地 天城湯ヶ島町(静岡県)の事例

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(資料:天城湯ヶ島町観光の及ぼす地域経済波及について、加藤英理子、1989年、立教大学小谷研究室、一部加筆修正)*宿泊業51件

 

表2−6 発展途上リゾート 松尾村(岩手県)の事例

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(資料:松尾村研究調査書、1982年、立教大学小谷研究室、一部加筆修正)*宿泊業18件、スキーインストラクター等は臨時雇用者として集計。

 

天城湯ヶ島町の事例では、常雇従業員、臨雇従業員とも8割以上が地元の住民である。天城湯ヶ島町も山村であるので、ホテル旅館が整備拡張していく段階で、旧来からの労働力では間に合わず、外部市町村から人々が入ってきた経緯がある。東京資本等も投入され、温泉地として成熟し、さらにゴルフ場や保養施設などが立地し、労働吸収力も大きくなっていった。現在の水準は余剰労働力があっての値ではなく、地域内で供給できる以上の需要があるため外部に労働力を依存している状態である。
一方発展途上の松尾村では、常雇従業員も管理職者も天城湯ヶ島町に比べ低い値となっている。一部共同経営の形態をとるものもあるが、ホテル旅館のほとんどは外部資本による経営である。スキー場開発が始まった当初は、地元雇用はさらに低い値で常雇従業員で60.1%、管理職者は54.5%であった。
このように観光地として成熟するにしたがい、雇用の地元供給率は上昇する傾向をもつ。なお臨雇従業員が非常に高い値を示しているのは、冬場のスキー場での労働需要が多いためである。これは東北の山村に多くみられるように、冬の出稼ぎの必要がなくなった好例である。

 

3. 人材育成の方法−産官学の役割−

(1)沖縄における人材育成の必要性
観光事業に経済発展の糸口を見いだそうとする地域では、観光事業の誘致と同時に、地域における観光の啓発活動や、人材育成のためのシステムづくりをすすめているところが多くみられる。沖縄県もそのひとつであり、浦添商業高等学校に観光コースが設置されたのをはじめ、観光リゾートの専門学校数も多くなり、若い人材の啓蒙教育に力を入れている。管理職者の育成についても、沖縄県の産業振興公社の派遣・研修事業など、公的資金を使っての育成事業の他、各企業での社内教育が充実してきている。調査結果によって明らかにされたように、現在約10,000人のホテルマンがおり、さらに約30,000人の観光関連産業従事者がいると推計される中で、その8割以上が県内出身者である。これらの人々のホスピタリティー技術や能力を高めていくことは、観光産業を基幹産業のひとつとして位置づけている地域社会の責任でもある。観光の推進によって雇用効果が期待されるのであれば、企業側の需要の条件に合う人材を育成し供給しなければならない。企業誘致のみに関心が奪われ、その企業を存続させるための人材育成を怠ることは、片手落ちの施策と

 

 

 

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